バイリンガル脳の特徴は? バイリンガル脳を育てる方法と英語学習との関係性
公開日:2022/07/03
更新日:2022/07/03
バイリンガルの人は、なぜスイッチが入ったかのように外国語を流暢に話せるのか、不思議に思う人も多いのではないでしょうか。英語をマスターさせたい、単に流暢に話せるだけでなく世界のどこでも生きていける本物の力を身につけてほしいと願う親御さんも多いはずです。今回は、バイリンガル脳の特徴と、英語を学ぶことでバイリンガル脳が育つのかどうか、さらにそのさまざまなメリットについて説明します。
1. バイリンガルの人はスイッチを切り替えるように複数言語を操る
バイリンガルの人は、2つの脳回路があり、スイッチを切り替えるようにして2種類の言語を話すといわれています。たとえば、従来の英語教育では「目で見た赤い果実」→「りんご」→「Apple」と変換しますが、バイリンガル脳は「目で見た赤い果実」→「Apple」と認識し、いちいち2種類の言語を翻訳することなく発話します。英語を上手に使える人は、脳の活動を英語に切り替え、英語を英語の脳で聞き、英語の脳で考え、英語の脳で話しているのです。日本語脳の引き出しを開けて、すべての言葉を翻訳する過程はありません。すべては英語脳内で完結し「翻訳」という作業がないため、母国語と同じようにレスポンスが早くなるというわけです。
バイリンガルは2つの脳がかなり似た仕組みになっているのに対し、第2言語を習得した人は、母語の脳のほうが大きくなっているのが特徴です。しかし厳密に言えば、実際に外国語を習得する過程では、母語の影響が全くないわけではなく、徐々に両方の言語の使用が進んでいくものであります。また、心理言語学の分野では、バイリンガルは常にどちらの言語を使うかを選択したり、言語プロセスにおいて両方の言語の想起が含まれていたりすることなどが指摘されています。
したがって「頭の中に共存する2つの脳を自由に切り替える」というのは、あくまでも言語習得を正しくイメージするためのモデルにすぎません。ただし、このようなイメージを知っているのと知らないのとでは、学習の際に感じる負担が大きく変わってきます。
2.バイリンガル脳とは?言語を司る2つの言語野について
バイリンガル脳とは、2つの言語を取得し変化した脳、いわゆる英語脳のことです。母国語だけでなく、外国語を巧みに操ります。しかし単に「外国語が話されている環境で育ったから外国語が話せるのでしょう」と考えてはいけません。世界各地で行われたバイリンガルの脳腫瘍患者の手術により、バイリンガルはモノリンガルとは異なる脳の領域を使って2つの言語を話していることがわかってきました。では、その脳の構造を再現することが、外国語学習のヒントになるのでしょうか。まずは、言語を司る2つの言語野の特徴について解説します。
2-1. ブローカ野(運動性言語中枢)
脳内のブローカ野は、左脳の前頭葉の端に位置し、主に言語処理、特に自発的な話し言葉をコントロールしています。喉や唇、舌を動かして発話を促す役割を担っているということです。運動性言語中枢とも呼ばれ、言語処理のほかにも手話の生成・理解に関与しています。
19世紀の外科医ポール・ブローカに由来する名称ですが、ブローカ野という概念は、もともと聴覚障害者のコミュニケーション習得において、音声言語の産出がどのように阻害されるかを説明するために生まれたものです。現代では、心理学的な処理メカニズムの解剖学的側面を説明するために用いられています。ブローカ野に損傷を受けた人は、言葉を理解することはできても、話すことが困難な状態になるという特徴があります。
特に、発話のための運動機能に著しい障害があり、その結果うまく話すことができません。さらに、話すことだけでなく、書くことも阻害されています。内容的には、単純な表現の簡単な文章しか扱えないということがわかっています。ブローカ野の活動がどのように変化するかをモニタリングすれば、このような言語障害の機能を回復するのに役立つ新たな知見が得られるかもしれません。この可能性は、言語取得のメカニズムをさらに解明し、言語教育の改善をすることにもつながるでしょう。
2-2.ウェルニッケ野(感覚性言語中枢)
ウェルニッケ野は、言語理解を司る感覚性言語中枢であるとされています。ブローカ野に損傷を受けた人は言語の理解はできても発話ができなくなるのに対して、ウェルニッケ野に損傷を受けた人は発語が流暢でも言葉を聞いたり理解したりすることができないという特徴があります。流暢に話すことはできますが、言語理解力が損なわれているため、聞き取りやすいけれども、全く意味が通じない言葉を話すという特徴もあります。
3.バイリンガル脳に見られる特徴
バイリンガル脳は、モノリンガル脳に比べて多くの変化が見られるのが特徴です。バイリンガルの脳は、より多くの神経細胞を持ち、さまざまな領域とのネットワークが強化されています。以下は、バイリンガル脳に見られる特徴を説明したものです。
3-1.ブローカ野と前頭前野が発達
私たちは普段、日本語で考え日本語で話しています。これは、私たちが日本語を学ぶときに、日本語だけがある環境で学んだからです。数十年前までは、幼少期に2つの言語を学ぶことは、子どもを混乱させ、母国語の言語発達を遅らせると考えられてきました。しかし、現代では子どもが2つ以上の言語を学ぶメリットが大きいことがわかっています。バイリンガルは、そうでない人に比べて、電話番号を覚える、指示された手順を覚える、暗算をするなど、情報を一時的に記憶する「ワーキングメモリ」を使う作業を得意とする傾向が明らかになってきたのです。
これは、前頭葉の中での思考や意識に関連する部分である前頭前野と、音声や言語の理解に関連するブローカ野の活動が高まっているからだと考えられ、バイリンガルの複雑な脳のプロセスと深く関係しています。その一連の流れは、まず2つの言語が混乱しないよう開けるべき引き出しを精査し、そしてその引き出しを開けたまま文を組み立て、さらに言語特有のニュアンスや発音などを判断するというプロセスです。異なる言語を認識して使い分けるという日常的な作業が、脳のトレーニングにつながっています。その結果、日常生活や学習を支える重要な能力であるワーキングメモリの働きが活性化され、会話や読み書き、計算などの基礎が強化されるというわけです。
3-2.後頭上回の灰白質密度が高い
バイリンガルの子どもの脳は、そうでない子どもに比べ、語彙の習得に関連している脳の領域・後頭葉上回の灰白質の密度が高いのが特徴です。灰白質とは、さまざまな情報を処理する脳の部分であり、密度は脳の成長を示しています。適切な場面で適切な意味を持つ言葉を選ぶという一連の作業をすることで、脳の形が成長したことを意味するのです。
4.バイリンガル脳になるメリット
バイリンガル脳のメリットは、なんといっても自由に複数の言語を話せることです。そしてほかにも、脳の特徴からさまざまなメリットが報告されています。
4-1. IQが高い傾向がある
一昔前までは、バイリンガル環境で育った子どもは、一定期間、言語発達が遅れる傾向にあると指摘されたこともありました。しかし、脳科学的な研究などではバイリンガルの子どもはIQが高いと報告されているのも事実です。バイリンガルの脳は、使っている言葉と使っていない言葉を素早く切り替えるという特徴があり、このプロセスは複雑です。このような処理を日常的に行っているため、脳が鍛えられ、IQが高くなる傾向があります。
一方、伝統的な英語教育では、単語を脳内に記憶し、英語の文章を作るための文法も知識として書き込んでいます。たとえば「食後にりんごを食べますか?」と英語で言いたいとすると、日本語の文の中の語彙を英単語に置き換え、英文法に沿って、語順や時制を整理し、文章を声に出すという、和文英訳のプロセスを辿ることになります。
旧来の英語や受験英語が鍛えているのは、日本語を英語に、英語を日本語に翻訳する能力だけです。これでは、膨大な時間がかかりますし、実際の会話では役に立ちません。また、英語の知識と日本語の知識を「マッピング」しているだけなので、時間が経って英単語や文法の知識がなくなってしまうと、勉強の成果が頭からすっかり消えてしまいます。KDIでは、1日の半分を英語、残りの半分を日本語で過ごします。その結果、年長児の平均IQは144.9となっており、知能における急速な発達が見られました。
IQ(Intelligence Quotient)とは、知能年齢を実年齢で割り、100を掛けたもので、一般的な平均値は100です。年中クラスでも平均IQは128と高く、子どもたちが大きく成長しているのが具体的に示されているのです。また、卒園時には小学3年生レベルの身体能力を持つことを目標とし、体力測定では、小学校高学年のレベルを記録した子どももいました。これもIQの高さがもたらすひとつの結果と言えます。
4-2.マルチタスクに強い
複数の言語を話すことで、情報を適切に選び取ったり、集中力をつけたりすることができます。異なる言語を行き来することで、脳の柔軟性が高まり、物事の優先順位を決めることができるようになるのです。柔軟性や好ましい判断力は、脳のストレス耐性を向上させます。それによって、バイリンガルはより困難な作業を効率よくこなす能力、いわば複数の仕事を同時に行う「マルチタスク」の能力が高くなるという特徴があります。
4-3.第3言語の取得にも役立つ
バイリンガルは、文法的なルールに対する感覚が鋭いという特徴があります。言語の相対的な性質を早くから認識しているため、第3言語を学ぶときにも役立ちます。
4-4.コミュニケーションがスムーズに取れる
バイリンガル教育の特徴として、さまざまなコミュニケーションの難しさを経験しやすいです。そのため、状況に応じたニーズを認識し、それに適切に対応してコミュニケーションを円滑に進めることができるようになります。
5.バイリンガル脳が育つのはいつからいつまで?
生まれたばかりの赤ちゃんの耳は柔らかく、どんな言語でも聞き取ることができます。しかし、6歳になって聴覚が完成する頃には、普段使わない言語の音を聞き分けることができなくなってしまいます。また、1歳を過ぎると、母語とほかの言語を区別する能力は徐々に低下していきます。ですから、英語の音が自然に聞き取れるようになる1歳までに、英語のリスニングを始めるのがベストです。5歳までには、子どもたちはたくさんの英語に触れるべきであり、英語だけで物事を考えられるようになるためには、5歳までに英語にたくさん触れさせることが大切です。5歳になると、日本語以外の言語を聞き取る力がつき、英語を日本語に訳す必要がなくなります。
米国の70万人を対象とした2018年の研究では「言語習得能力は17.4歳まで一定である」という結果が出ており、毎日続けていれば、5歳を過ぎてもバイリンガルの脳を育てることは可能です。しかし、適齢期を過ぎると英語脳を育てるのが難しくなりやすいので、小さい頃から常にたくさんの英語に触れることが大切です。大人になってから困らないように、子どもたちが自然に英語に触れられる環境を作ってあげると良いでしょう。
6.バイリンガル脳に育てる方法
子どもの英語脳を育てるためには、親が適切な環境を整えることが大切です。ここでは、日本人が英語脳を育てるにはどうしたらいいのかを紹介します。
6-1.幼い頃から多くの英語に触れる
英語学習には、読む・書く・聞く・話すという4つの方法がありますが、耳からどんどん言葉を吸収して言語能力が発達する幼児期は、特に「聞く」「話す」能力を育むことが重要であるとされています。聞くこと・話すことができる好ましい環境に身を置くことで、バイリンガルと同じようによりネイティブな発音を聞いたり、きれいな発音で話したりすることができるようになるのです。
親が気をつけなければならないのは「英語をマスターしてほしい」と思うあまり、子どもに過度な期待をかけたり、無理な勉強をさせたりしないことです。アルファベットを徹底的に覚えさせたり、小さいうちから資格試験を目標にしたりと、子どもに無理をさせてしまうと、子どもは英語に苦手意識を抱いてしまいます。小さい頃から自然な英語環境で聞いたり話したりしていけば、日本語を習得するのと同じように、自然に楽しく英語が身についていきます。また、それまで培ってきた英語脳の回路が途切れないように、英語に触れ続けられる環境を継続することも大切です。
6-2. 英語は英語だけの環境で学ぶ
先に述べたように、バイリンガルの脳は、2つの言語が混同しないように、脳内の使われていない言語を遮断し、使われている言語に集中するという複雑なプロセスを持っているのが特徴です。そのため、言語を混ぜることなく、英語だけの環境で英語を学ぶことが大切になります。「外では英語、家では日本語」というように、状況や相手によって言葉を変えるのもいいでしょう。
英語環境を整えてバイリンガル脳を育てよう
バイリンガル脳とモノリンガル脳では、脳の発達に大きな違いがあります。バイリンガル脳を育てるためには、幼少期に英語を学ぶだけでなく、さまざまな文化に親しむことができる環境に身を置くことが大切です。KDIでは、子ども達が真の国際人になるための土台作りができます。まずは、入園説明会に参加してみてはいかがでしょうか。
早期英語教育には、英語力を身につける以外にもさまざまなメリットが存在します。異文化理解を深め、自信をもって英語でコミュニケーションをとれるようになるために、幼少期から英語に触れさせていきたいものです。
学習法は、習い事や教材を利用するほか、英語のCD・DVDを流すなどさまざまな選択肢が存在します。ただ、一定以上の英語量に触れさせ、英語を話す環境下に身を置くとなると、「インターナショナル幼稚園」や「プリスクール」が最適かもしれません。
早期英語教育を中心とした独自のカリキュラムを採用しているのが、バイリンガル幼児園「Kids Duo International」。卒園までの4年間で約3,000時間を英語で過ごすため、英語教育に関心の高い保護者の方から注目を集めています。
40年間にわたって培われた教育カリキュラムでは、語学以外の面にも注力。バイリンガル講師とのコミュニケーションや知能教育のほか、クラスメイトとの遊びを通して英語圏と日本の文化に触れられるなど、日本語と英語をバランスよく学ぶことも大切にしています。
執筆者:バイリンガル幼児園Kids Duo International コラム編集部
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